出来事は容赦なく押し寄せてきた。 サーラ、覚えているか? あれから数日後、イタリアがアルゼンチンとのワールドカップの決勝でパオロ・ロッシとロベルト・ボッテガがゴールを決めて勝利した時の、あの感覚を。 皆が通りに躍り出た。国中がヒステリックな歓喜の熱に浮かされていた。生きていることを実感していた。希望があり、未来への喜びがあった。俺たちの12歳が永遠に続くとも思えた。 世界チャンピオンだ。お前も俺もだ、サーラ。世界チャンピオンなんだ! あの夜を忘れることはできない。 なぜなら通りには俺たちの他に、戦車がいた。 ワールドカップの決勝に人々が気を取られていることを利用したのだ、と言われていた。 時間をかけて準備され、綿密な計画によってあの日が実行の日に選ばれたのだ、とも言われていた。 実際にどうだったのかを知る者はいない。なぜならあの日からそれについて聞ける者は誰もいなくなったからだ。 国益を中心に考える奴らの後ろ盾を得た愛国者たちの一部は、国家の治安維持に動こうとしていた。奴らからすれば共産党がキリスト教民主党と共に政権に入ることは国にとっての致命的な危機に写った。奴らは議会を解散させ、ジョヴァンニ・レオーネ大統領とそのほかの要人を逮捕した。 ただ、あの夜はまだ俺たちのものだった。全てが魔法のように完璧で、俺は今までに抱いたことのないほどの勇気を抱くことができた。 俺たちの共同住宅エントランスにあるL字の階段の下、警察のサイレンと軍事車両の異様な往来が、お祭り騒ぎの人々の乗る車と入り乱れていた中で、俺はお前の腕を掴んだ。柔らかな灯りに照らされて、俺たちの目は明るく輝いていた。 俺は自分の唇をお前のに重ねた。絹のようだった。お前が小刻みに揺れているのに気がついた。それから俺たちはお互いに抑えきれず思いっきり笑った。 俺たちは片方の足を大人の世界に置きながら、途方もない感情を分け合っていた。 俺はあの瞬間が終わらないように望んでいたんだ、サーラ。 俺たちは頂点に達していた。ほんの一瞬だが、雲に触れた。 残念ながら、そのあとは落ちていくことしかできなかった。 数ヶ月後、俺たちは疎遠になった。 結局、こうなったんだ。少年時代は終わりを迎えていった。俺たちは感情を制御する準備ができていなかった。大人の世界が予期せず、荒々しく俺たちの扉をノックした。あの夜の出来事がその前触れだったんだ。
il mio 1978 (続く)
訳:亀崎 洋太(かめざき ようた / Yota Kamezaki)