~ イタリア語の歌を聴いてみませんか? ~ 11.逢いびき / ~ 記憶の中のカンツォーネ ~ 第11回


11.逢いびき / ~ 記憶の中のカンツォーネ ~ 第11回
《L'amante della musica》

前回取り上げた「甘い囁き」。なんでも、最近公開された『パローレ』(2004年)という日本映画で、 主演の烏丸せつこ&有田哲平が歌う日本語版が聴けるそうで、それは知りませんでした。今度観てみます。 他にも日本語版の「甘い囁き」は、中村晃子&細川俊之版(こちらの方が有名かも)もありますので、 どこかで耳にした歌、まさに「記憶の中のカンツォーネ」だと言えるでしょう。

今回は、「そういえばまだちゃんと取り上げてなかったな」とふと思い出した歌をご紹介しましょう。 テレビ番組『小さな村の物語 イタリア』の主題歌として、 この数年のうちによく知られるようになった歌ですので、 なんだかもう取り上げてしまったような気になっていました。 実はこの番組、まだ数回しか観たことがないですが(視聴環境が整ってなくて……)、 イタリアの田舎の生活が描かれているなかなか面白い番組ですね。DVDも出ているそうで、 そのうち全部観てみたいものです。

この番組で使われているのが、オルネッラ・ヴァノーニ(Ornella Vanoni)の歌う 「L'appuntamento」(邦題:逢いびき)です。 この曲は、映画『オーシャンズ12』でもちょっとだけ使われていましたので、 それで知った方もいるのではないでしょうか。 また、金子由香利の歌う日本語ヴァージョンもありますが、 そのシャンソン風な歌い方は僕にはどうもしっくりきませんでした。

オルネッラ・ヴァノーニは、以前本コラムでも取り上げたミーナや日本でもおなじみのミルヴァとほぼ同世代の大御所歌手です。 もう70歳を越えていると思いますが、近年も精力的に活動しているようで、 2008年にもイタリア・ポップス界の大物たちと共演したアルバム『Piu' di me』を出して話題となりました。 すばらしいことですね。彼女はサンレモ音楽祭の入賞曲「Casa bianca」でもよく知られていますが、 1970年のこの「L'appuntamento」は、彼女の最大のヒット曲と言ってもいいでしょう (前述の2008年のアルバムでも、自分の半分以下の年齢の歌手カルメン・コンソリ(Carmen Consoli)とデュエットしています)。 さわやかでほのぼのした感じが妙に心安らぎます。 まるで『小さな村の物語』のために作られた歌であるかような錯覚さえしてしまいそうです。

歌の内容はこんな感じです。


Ho sbagliato tante volte ormai che lo so gia'
che oggi quasi certamente sto sbagliando su di te
ma una volta in piu' che cosa puo' cambiare nella vita mia...
accettare questo strano appuntamento e' stata una pazzia!

何度も過ちを犯したのは分かっている
今日もきっとあなたのことで過ちを犯しているのでしょうね
でも、もう一度私の人生で何かが変えられるのなら……
この奇妙な逢いびきに応じるなんて馬鹿だったのよ!

(中略)

Amore, fai presto, io non resisto...
se tu non arrivi non esisto
non esisto, non esisto...

ああ、愛する人、早く、もう待ちきれない
もしあなたが来なかったら生きていけない
生きていけない、生きていけないの……


……状況はよく分かりませんが、いろいろと深読みできそうです。 ともかくも、さわやかな印象とは裏腹に、かなり緊迫した愛の物語のようです。 気のせいかどうも不穏なにおいも感じられます。 曲だけ聴くと、明るい日差しの中、のんびり散歩しているような印象を受けるのですがねえ。

この歌はもともとブラジルの歌手ロベルト・カルロス(サッカー選手じゃないですよ)の ヒット曲「道ばたにすわって」(Sentado a beira do caminho)にイタリア語歌詞をつけたものです。 原曲はこんな感じです。


こちらもなかなかいいですね。

イタリア音楽コラム
~ 記憶の中のカンツォーネ ~ 第11回
2010-02-16